近赤外分光入門 －基礎と応用

関西学院大学　尾崎 幸洋 氏

近赤外分光法は、振動分光法でもあり、電子分光法でもある。基礎研究も応用も非常にユニークな分光法である。応用面では、丸ごとあるがまま非破壊非侵襲で分析ができるのが近赤外分光法の利点である。本講演では、近赤外分光法の基礎、応用について解説する。基礎に関しては、その特徴について詳しく述べる。また振動分光法の基礎として分子の振動についても概説する。さら振動の倍音、結合音、非調和性についても解説する。応用に関しては物理化学、分析化学、生命科学、食品農産物、医学薬学など幅広く紹介する。また最近話題のハンドヘルド法やイメージングについても紹介する。

休憩

振動分光の基礎と解析法（ビデオ講演）

近畿大学　森澤 勇介 氏

振動分光は分子の中で結合している原子の質量とその結合次数によって、吸収や散乱される光の周波数が異なる。これは試料中の官能基を分析するのに適した手法である。さらには、試料中の官能基が多ければ多いほど吸収が大きくなる性質を利用して定量分析に用いることができる。振動分光の中で、近赤外分光は他の振動分光に比べて、物の中身を非破壊で分析することに長けた手法である。
本講演では、振動分光の基礎となる中赤外領域に観測される振動の基本音の量子力学的説明から始め、近赤外領域に観測される振動の倍音へと導く。そこから、近赤外分光法の持つ特徴である、（１）透過力に優れること、（２）X-H振動に特化していること、（３）非調和性について説明する。また、近赤外分光ではケモメトリックスなどの解析法が大いに役立つが、その前段階の検討としての簡単な微分スペクトルや差スペクトルについて解説する。内容としては、理工系大学の機器分析の講義程度のものを想定するが、ところどころに新しい知見を含めていきたいと考えている。

休憩

データインフォマティクスの基礎と近赤外への応用

産業技術総合研究所　新澤 英之 氏

AIや機械学習に代表されるデータインフォマティクスは研究開発の現場のDX化に必要不可欠な技術である。特に化学分析においては分析装置のハイスループット化が進んでおり、大量の分光スペクトルの分類、特徴的なサンプルの抽出するスペクトル解析に特化したインフォマティクス技術が求められる。
本講演では近赤外スペクトルの解析のためのデータインフォマティクスを紹介するとともに、プログラミングの知識が全く無くともマウス操作で簡単にデータインフォマティクスによる解析が行えるソフトウェアによる実演も行う。