テラヘルツ(THz)帯を使用した技術は、新しいセンシング技術を提供し、セキュリティ、医療・バイオ、情報通信分野での応用が見込まれています。
 今回は様々な応用に対応するため研究の進められるレーザーから受信機までのデバイスを取り上げました。ぜひこの機会にご参加下さい。

開催日時

2021年4月22日(木)10:00~16:50(聴講者入室:9:45~)

形態

Zoomを用いたWEBセミナー(Zoomウェビナー)
注)本セミナーでは録音・録画、PC画面の撮影、また配布しますセミナーテキストの複製・第三者への提供などの行為一切を固く禁じます。

プログラム

講演時間に質疑応答10分程度を含みます。

10:00~10:55

新発想のレーザー技術で狭帯域の高エネルギーテラヘルツ波を発生

理化学研究所 平等 拓範 氏

 かつてメーザーはレーダーの高性能化にかかる重要研究として注目され、そのアンテナを原子・分子の双極子とする議論の中、1960年にメイマンがレーザー発振に成功した。狭帯域の電磁波発生技術が電波から突如、光の領域にジャンプした出来事である。以降、長らく電波と光の波長ギャップであった領域こそがテラヘルツ波に相当する。そして狭帯域で高出力な、すなわち高輝度テラヘルツ波発生とその検出は近年まで困難とされていた。故に、この未知の高輝度電磁波はサイエンスのみならず新たな産業のシーズとも期待される。
 本講演では、まず、手のひらサイズの狭線幅サブナノ秒マイクロチップレーザーにより可能となった小型の狭線幅テラヘルツ波光源と高感度テラヘルツ波検出法について述べる。さらに、開発した大口径擬似位相整合素子LA-PPMgLNによる量子限界を超える狭帯域で0.6mJに至る高エネルギーテラヘルツ波発生について紹介する。最後に、宇宙の成り立ちに迫る高エネルギー物理の新展開に繋がる次世代レーザー加速器を目指した現在の取り組みについて議論するのだが、新たな取り組みはこれからの身近に使える高輝度テラヘルツ波発生やその高感度検出法にも展開できるだろう。
 以上、新たな方式による狭帯域の高エネルギーテラヘルツ波発生法、及びその高感度検出法は、レーザー加速など基礎科学から安心・安全社会の構築に貢献するだけで無く、さらには思いも寄らなかった新たな応用の発見にも繋がると期待される。

10:55~11:50

室温動作テラヘルツ量子カスケード半導体レーザーの現状と応用

浜松ホトニクス(株) 藤田 和上 氏

 分子線エピタキシー法,有機金属気相成長法に代表される半導体超薄膜作製技術を用いて作製される量子カスケードレーザー(Quantum Cascade Laser: QCL) は半導体レーザーの一種である。この半導体レーザーでは,電子と正孔が再結合することにより光を放出する従来型の半導体レーザーとは異なり、半導体量子井戸構造内のサブバンド量子準位間の遷移を用いることで中赤外領域において高出力室温発振が実現され、既に広く実用化されている。中赤外よりも波長の長いテラヘルツ領域では長らく室温での発光は困難であったが、QCLキャビティ内での非線形光学効果に基づいたテラヘルツ非線形QCLの登場により、室温動作が実現された。
 近年の非線形活性層構造と導波路構造の最適化の結果、現在も大幅な特性向上が進んでいる。現時点で、周波数1 THzを超える領域をカバー可能な唯一の電流注入型テラヘルツ小型半導体光源である。既にこの新しいテラヘルツ小型光源を用いてイメージング実験も実現されており、実用化が大きく近づきつつある。
 本講演では、QCLの一般的な動作原理とその特性について紹介した後、テラヘルツ非線形QCLの詳細について説明し、近年の大幅な動作特性の向上のカギとなった結合二重上位準位(Anti-crossed Dual-upper-state: DAU)構造を用いた非線形QCLについて紹介する。次にその超広帯域な動作特性とイメージング応用への適用例を示す。そして、最近の大きなトピックスである周波数1THz以下のサブTHz帯で動作可能な非線形QCLについて解説し、最後に今後の展望を述べる。

11:50~13:00

昼休み

13:00~13:55

MEMS技術を用いた高感度・高速テラヘルツセンシング

東京大学 平川 一彦 氏

 テラヘルツ・赤外領域には、様々な分子の振動・回転等のモードの周波数が含まれており、テラヘルツ・赤外領域分光は極めて有用な計測技術である。近年では様々な製造現場、医療現場などオンサイトで測定を行いたいという要望も高まりつつある。様々な場面でテラヘルツ・赤外領域分光を行うためには、極低温への冷却を必要としない広帯域・高感度・高速の検出器の開発が必要不可欠である。
 一般に光子エネルギーが小さいテラヘルツ・赤外領域では、光を一旦熱に変換し、温度上昇による半導体の抵抗変化などを信号として用いる熱型センサー技術が広く用いられる。しかし、従来の熱型センサーは、動作温度や検出速度の観点から、広く用いられているとは言い難い。
 MEMS両持ち梁共振器構造は、典型的な共振周波数が数百kHz〜数MHzにあり、室温でも数千~1万程度の高いQ値を有している。我々は、1)機械的な共振周波数が梁の熱膨張により非常に敏感に変化すること、2)MEMS梁構造の熱容量が極めて小さく、高速動作に適していること等に注目して、MEMSのテラヘルツセンシング応用の研究を行っている。本講演では、テラヘルツ電磁波の吸収によるわずかな温度上昇を、半導体へテロ構造で作製したMEMS両持ち梁共振器の共振周波数シフトとして読み出す新しい原理のテラヘルツ検出器が、従来の室温動作熱型センサーと同等の感度を有しつつ、10〜100倍程度高速な検出ができることを紹介したい。

13:55~14:50

THz波の透過性と位相を変えられる微小機械駆動チューナブル・メタマテリアル

東北大学 金森 義明 氏

 メタマテリアルの電磁誘起透明化現象(Electromagnetically Induced Transparency: EIT)を微小機械で自在に制御する技術を開発し、電圧でTHz波の透過率や位相を制御することができるチューナブル・フィルターを実現しました。マイクロマシニング製造技術を用いて作られるため小型・量産性に優れ、電子回路や半導体と組み合わせてTHz波の高度な制御が可能になります。次世代通信技術「6G」をはじめ、幅広い分野での応用が期待されます。
 メタマテリアルは、超微細構造体で構成される人工光学物質で、これまでの電磁波操作技術の限界を打ち破る革新的な人工構造体として注目されています。今回、EITメタマテリアル構造を微小電気機械システムで可変させることで、6Gに向けた新たなチューナブル・THz波制御技術の開発に成功しました。
 講演では、以下のポイントを解説いたします。
・EITメタマテリアルとは
・チューナブルEITメタマテリアルの光学設計
・チューナブルEITメタマテリアルの製作方法
・チューナブルEITメタマテリアルの動作特性

14:50~15:00

休憩

15:00~15:55

6G(Beyond 5G)無線通信に向けたテラヘルツ波帯平面アンテナの研究

東京農工大学 鈴木 健仁 氏

 6G(Beyond 5G)無線通信に向けて発明した「テラヘルツ波帯平面アンテナ」(特許6596748, US 10,686,255 B2)の研究について、最新の進捗状況も含めて解説します。独自に生み出した「極限屈折率材料」を用いています。極限屈折率材料は、10を越える超高屈折率、ゼロ屈折率(特許6676238)、0以下の負の屈折率を有しながら、無反射となる人工構造材料(メタサーフェス)です。人工構造材料のアイデアが製品化に結びついた「超高感度偏光子」の例も紹介します。また、JSTさきがけ(熱制御)での取り組みについても紹介します。極限屈折率材料の支配法則の理解を深めながら、赤外域へと高周波化しています。この独自な材料により、「熱輻射の再利用」を目指しています。

15:55~16:50

未開拓のテラヘルツ領域を拓く、高感度・広IF帯域ヘテロダイン受信機を開発

国立研究開発法人 情報通信研究機構 川上 彰 氏

 テラヘルツ波とは、ミリ波の一部と遠赤外線を含む凡そ100 GHz~10 THzの周波数領域の電磁波をいう。同時にこの領域は、未だ開発や利用が進んでいない“未開拓周波数領域”とも呼ばれている。将来の高速無線通信、セキュリティ、医療、地球環境計測・電波天文など幅広い応用が期待されているが、現状は技術開発の最中であり、特に1 THzを超える周波数領域では、未だ発振・検出という基盤技術の開発が主たる研究課題である。NICTでは新たな周波数資源の開拓を目指し、その基盤技術として2 THz帯超伝導ホットエレクトロンボロメータミキサ(HEBM)の研究開発を進めている。
 HEBMは、二つの近接した金属電極を極薄の超伝導薄膜ストリップで接続した構造を有し、1.5 THz以上の周波数領域で、最も低雑音のヘテロダイン受信機を実現している。我々はHEBMの更なる低雑音化と、積年の課題であった中間周波数(IF)帯域の拡大を実現するため、磁性材料により超伝導状態の発現箇所を制御する、新たなHEBM素子構造(Ni-HEBM)を提案した。磁性材料としてニッケル(Ni)薄膜をHEBM電極に採用することで、電極直下の超伝導ストリップの超伝導性を抑制できることを確認、電極間のわずか0.1 μm長の領域のみに、超伝導性を残すことに成功した。その結果、Ni-HEBMのIF帯域幅は、従来の約3 GHzから約6.9 GHzに向上。また2 THzにおける損失補正後のミキサ雑音温度として、約570 K(DSB)という世界トップレベルの低雑音特性を達成した。
 講演では、研究背景から2 THz帯Ni-HEBMの構造と性能評価、実応用を目指した2 THz帯導波管型Ni-HEBMについて説明する。そして新たな展開として、ナノアンテナによる61 THz帯HEBMについても言及する。


参加方法 他

参加方法 4月21日(水)にZOOM招待メールをお送りいたします。
接続テスト 4月21日(水)17:00~17:20
接続確認が終了いたしましたら退出をしていただき、当日9:45になりましたら同様の手順によりご入室ください。
講演資料 4月21日(水)に順次送信しますZOOM招待メール内に、講演資料のダウンロードURLを記述したしますので、ダウンロードをお願いいたします。
注)配布資料は公開可能な範囲となります。また、資料は複製・コピー、第三者への開示・提供を固く禁じます。

受講料・申込方法ほか

受講料 26,400円(税込)* 講演資料代含む
---複数名申込割引---
同一企業から複数名でお申込みいただいた場合、
2人目以降の方の受講料を半額の13,200円(税込)にさせていただきます。
<3人以上の場合> 備考欄に受講される方の「お名前」「ご所属先」「E-mailアドレス」をご記入ください。
申込・支払方法 下部にあります、お申込みフォームよりお申込み下さい。
受付が完了しましたら自動返信メールが届きますので内容をご確認ください。
<お支払いについて>
後日、決済用URLを記載した請求書(クレジット用)をお送りします。お支払いは4月20日(火)までにお願いいたします。

領収書発行 領収書(PDF)が必要な場合は、備考欄にご記入ください。決済後1週間位でメールにて送付いたします。
申込締切 4月20日(火)15:00
お問合せ (株)オプトロニクス社 担当:加納・三島
Tel:(03)3269-3550 E-mail:seminar@optronics.co.jp

※セミナーの参加受付は終了いたしました。